サルサ音楽の楽しみ方
私は小学校の頃に音楽が好きになりました。最初は歌謡曲(今で言うJ-POP)が好きになり、それからクラシック音楽、ロック、フュージョン、ジャズといろいろなジャンルの音楽に興味を持ちました。そして、いくつかの楽器や作曲理論を勉強して、自分で作曲した曲をバンドで演奏したりしていたので、音楽は詳しい方だと思っていました。そんな私でも、といってはなんですが、初めてサルサのレッスンに行ったときの感想は・・・一拍目がどこだか分からない、サルサとメレンゲの違いがわからない、のように皆目見当が付かない感じでした・・・!
サルサはカウントが分かりづらい、とは初心者の方からよく聞くことです。それには理由があります。一番大きな理由はサルサ音楽自体が日本人に馴染みが薄いからでしょう。時々BGMにサルサを流しているレストランなどがありますが、テレビやラジオではほとんど聞くことがありません。もう一つの大きな理由は、サルサ音楽のリズムが複雑だからだと思います。サルサ音楽の源流はキューバ、そして更に元を辿ればアフリカの音楽があります。代々木公園に行くと必ずいる、何人かで民族的なドラムを叩いて演奏している音楽、あれがアフリカン・ドラムです。それぞれの人が別のリズムを刻むことで複雑なリズムが表現されます。サルサ音楽にも同じ血が流れていますので、カウベル、クラベス、ボンゴ、コンガなどといったの複数の打楽器が別々のリズムを刻んでいます。だから、どの楽器のリズムを聴いたらよいのか脳が混乱して、カウントが分かりづらいことになりやすいのだと思います。
サルサ音楽には陽気な曲、ロマンティックな曲、ソウルフルな曲、さまざまな雰囲気の曲がありますが、根底には大抵複数の打楽器が創りだす複雑なラテンのリズムが流れています。まずはそれぞれの楽器が奏でるリズムを一つずつ聴いてみてください。先ほどあげた4つの打楽器の他、ベース、ピアノが奏でるリズムも聴いてみてください。ひと通り聴いてみたら、今度は全てのリズムが合わさって生み出される全体のリズムを感じるように聴いてみてください。曲によって演奏されている楽器は違いますので、いくつかの曲で比較して聴いてみると面白いかもしれません。まず全体のリズムを聴いてみてから、その後にそれぞれの楽器のリズムを聴いてみてもいいかもしれません。料理に例えてみると、それぞれの楽器のリズムを聴くことは、砂糖・塩・酢・醤油・味噌それぞれの味を知るのと大体同じでしょう。いろいろな材料や調味料を使って料理を作りますが、大抵の人が出来上がった料理の味を楽しむように、音楽の場合も曲全体のリズムを楽しみます。料理が得意な人は味を楽しみつつ、材料や調味料を想像したりして二倍楽しむことができます。ラテンのリズムも同じように、どの楽器がどんなリズムを奏でているのか聴くことで楽しさも二倍という訳です。
この複雑なラテンのリズムには高揚感と嗜好性があります。噛めば噛むほど味の出るガムのように、聴けば聴くほど味わい深くなります。ニューヨーク・スタイル・サルサには、このラテンのリズムを身体に反映させるという暗黙の命題があり、踊りにも音楽の高揚感や嗜好性が反映され、踊れば踊るほど味わいが出てくるのです。NYOn2が世界的に多くのダンサーを魅了する理由はこれなのだと私は思います。そして私も踊るほどにダンスが好きになり、音楽が好きになっている一人です。